[デートでガチバトル]「スポーツバーでデートしたら華麗に叩きのめされました」Part 3
バーの空気がわずかに張り詰める。
壁際のネオンが淡く瞬き、盤面の数字だけが鮮やかに光っている。
オスカーがダーツを握り、笑みを浮かべた。
「これが最後の勝負ですね」
ジュリアスはグラスを置き、淡々と応じる。
「勝ち負けより――面白いゲーム、といこう」
二人の視線が、ブルの中心で交わった。
オスカー、一投目――トリプル20。
二投目――トリプル19。
三投目――ブル。
合計180点。
矢が抜かれる瞬間、周囲の客が小さくざわめく。
ジュリアスのターン。
一投目――トリプル20。
二投目――またトリプル20。
三投目――さらにトリプル20。
同じく180点。
オスカーが思わず口を開く。
「……集中力がバグってるだろ…」
ゲームは中盤へ。
オスカーはわざとわずかに外し、ジュリアスの間合いを崩そうとする。
ジュリアスは気づきつつも、その揺さぶりにあえて乗った。
次のターン、ジュリアスは一投だけシングル1へ。
「……今のは……わざと?」
「さあ、どうだろうな」
矢と視線の読み合い。
盤面は数字だけでなく、それぞれの思惑の色で塗り替えられていく。
相手の意を読もうと、加速する駆け引き。
そして最終ラウンド。
オスカーがあと1投ブルを決めれば、勝利は確定。
手首がわずかに締まり、矢は一直線に構えられる。
――その瞬間。
カウンターの奥で、マスターの手からワイングラスが滑り落ちた。
「ガシャーン!」
澄んだ破片の音が空気を切り裂く。
オスカーの指がわずかに緩む。
ダーツは軌道を外れ、壁のコルクに突き刺さった。
沈黙。
ジュリアスが口角を上げる。
「アクシデントも勝負のうちだな」
オスカーは悔しさを押し殺し、矢を抜きながら息を吐く。
「……まったく、勝たせていただけないようですね」
ネオンがまた瞬き、三戦の幕が下りた。
勝者は変わらず――静の支配者だった