[デートでガチバトル]「スポーツバーでデートしたら華麗に叩きのめされました」Part 2
盤面が切り替わり、クリケットの数字が光る。
周囲のざわめきが遠くに引いていく――ジュリアスの耳には、もう自分の呼吸と心臓の音しか届かない。
一投目。
トリプル20。
赤い枠に矢が吸い込まれ、LEDが高らかに20の点灯を告げる。
二投目。
同じ穴を狙い、再びトリプル20。
三投目は落ち着いてシングル。
開始直後で、すでに20は“封鎖”されていた。
オスカーは眉を上げる。
「おっと…守りに回れってことですか」
だが攻めるのが彼の流儀。
トリプル19を狙う――一投目は成功。
しかし二投目、わずかにずれ、シングルの1へ。
「チッ…」小さく舌打ちが漏れる。
ジュリアスは淡々と、次の標的へ。
19、18、17……数字が静かに塗りつぶされていく。
その投げ方には、力みも迷いもない。
矢を“置く”というより、“刺さる場所を決めている”かのようだ。
オスカーの攻撃はことごとく遮られ、スコアが伸びない。
盤面はジュリアスの支配下に入り、残されたのはブルのみ。
ジュリアスの目がわずかに細まる。
最後の一投――矢は一直線に飛び、ブルの中心を射抜いた。
電子盤が白く輝き、勝負が決まる。
ジュリアスは矢を抜きながら、静かに言った。
「経験はそなたに及ばないが……勝負には慣れている」
オスカーはグラスを一気にあおり、苦笑する。
「くっ…さすがはジュリアス様。何をなさってもお強い」