ビリヤード: 第二戦「ナインボール – 動の勝負」

[デートでガチバトル]「プールバーでデートしたら華麗に叩きのめされました」Part 2

オスカーがバーボンのグラスをカウンターに置き、静かに立ち上がる。
「では――次はナインボールにいたしましょうか」

ジュリアスは眉をわずかに上げ、軽く頷く。
「よかろう。今度はスピード勝負だな」

照明が再びテーブルに落ちる。
番号のついた9個の球が整然と三角に組まれ、白球が待つ。

ブレイクショットはオスカー。

低く構えた背筋が、まるで弓を引き絞ったようにしなる。

カンッ!

――ラシャの上で弾けた球が散り、1番、3番、そして6番が次々とポケットへ吸い込まれる。

場がざわめき、誰かが低く口笛を吹いた。

ジュリアスは無言で構え、白球を外側から強く回転させる。

――マッセショット。
白球は不自然な軌道で曲がり、隠れた2番をすり抜け、ポケットへ落とす。

オスカーがすぐに反撃。

わずかに障害球に塞がれた4番へ、ジャンプショット。
白球が浮き、障害球を飛び越えてクリーンヒット。
そのまま5番、7番と連続で沈め、客席から小さな拍手が起こる。

ジュリアスはキュー先を微妙に傾け、下回転のスピンを加える。
白球がクッションを二度弾き、絶妙な角度で8番を落とし――自然な流れで9番の射程へ。

テーブル中央に残る9番。
観客の視線が一瞬で一点に集まる。

オスカーは軽く肩で息を整え、キューを持ち直した。不敵な笑みが唇に浮かぶ。

「ー ここで終わらせる。派手にな」

彼の目は9番に吸い込まれるように集中していた。手元はわずかに震え、呼吸を整える。

オスカーはキューを立て、ジャンプショットの体勢に入る。
観客の息が止まった。

「まさか…ここでジャンプ!?」
ざわめきが広がる。

一気に振り抜く。白球が軽く宙を舞う。

まず一つ目のクッションに跳ね、続いて二つ目に当たり、完璧な角度で9番球へ。

“カツン!”

9番ポケットに吸い込まれる瞬間、バー全体が静寂に包まれた。

観客の驚きと興奮が、やがて歓声となって爆発する。

「やったあああああ!」
「信じられない!あの角度でジャンプして、クッション2つ…!」

オスカーは肩の力を抜き、ゆっくり息を吐きながらキューを肩に担ぐ。
わずかに微笑み、観客席に向かってウィンクをひとつ。

「これが俺のやり方だ」

ジュリアスはグラスを軽く掲げて微笑む。
「…完敗だ。あれは誰にも真似できん」

オスカーはグラスを合わせながら答えた。
「勝つなら、記憶に残さなきゃ意味がない」

笑顔を交わすと、静かな祝福の空気が流れる。
オスカーの鮮やかな技が、ナインボールの勝負に華を添えた瞬間だった。