予定外のキス

週末は、特別な意味を持たない時間として、二人のあいだに置かれていた。

大きなソファに並んで腰を下ろし。
ジュリアスはエスプレッソを口に運び、オスカーは静かに本をめくっている。
互いに干渉せず、それでいて離れてもいない。
そういう距離が、いつの間にか当たり前になっていた。

会話が途切れてから、どれほど時間が経ったのかは分からない。
沈黙は、重くもなく、しかし完全に無意識でいられるほど軽くもない。

ジュリアスは視線を落としたまま、思考の端がささくれ立つのを感じていた。
何かを言うべきだろうか。
それとも、このまま何も起こらないことを受け入れるべきか。

沈黙に意味を見出そうとする癖は、職務の延長なのか、それとも性分なのか。
自分でも分からないまま、彼は隣の存在を意識していた。

ふと顔を上げると、オスカーと目が合った。

迷いのない、澄んだアイスブルー。
問いでも確認でもない、ただこちらを見ている視線。

次の瞬間、距離が消えた。

唇が触れ合う。
意図を測る暇も、意味づける時間も与えられないほど、自然な動作だった。

驚きはあったが、拒む理由は見当たらなかった。
それは衝動というより、長く続いてきた静かな了解が、形を取っただけのようにも思えた。

短い接触ののち、唇は離れる。

オスカーは何事もなかったかのように視線を本へ戻し、ページをめくる。
呼吸も姿勢も、先ほどまでと変わらない。

ジュリアスだけが、わずかに動けずにいた。

(……ああ)

胸の奥で、何かが静かにほどける。

沈黙をどう受け取るか、どう意味づけるか。
考えていたのは、最初から最後まで自分だけだったのだと、ようやく理解する。

隣にいる男は、説明も確認も必要としなかった。
必要なときに、必要なことを、言葉を使わずに示す。

そのやり方に、ジュリアスは抗えない。
抗おうとも思わない。

ソファの上には、再び静かな時間が戻ってくる。
だがそれは、先ほどとはわずかに質を変えていた。

ジュリアスは何も言わず、エスプレッソをもう一口飲んだ。
隣では、ページをめくる音だけが、穏やかに続いていた。