温度差のあるキス

女王の力によって常に快適に保たれているはずの聖地は、
戴冠後間もない新女王の思いつきで、珍しく厳しい寒さに見舞われていた。

普段は長風呂の習慣のないジュリアスだが、ここ数日はゆっくり入浴している。
こう寒さがつづくようでは、よく温まるに越したことはない。

この夜も、少し長めに湯に浸かって体を温めていた。
そろそろ出ようとバスローブを羽織ったそのとき。

私室のドアをノックする音。
こんな時間の来訪者など心当たりは一人しかない。

「失礼します」

「どうした、こんな時間に」

「凍てつく夜のナイトキャップをご一緒にと思いまして」

オスカーは手にしていた美しいビンを、コンソールの上に置く。

「外はかなり冷え込んでいるだろう」

「ええ、ですから――」

そのままバスローブ姿のジュリアスに近寄る。

「暖めてください」

風呂上がりの熱を帯びた唇と、
冬の夜気を吸い込んだ冷たい唇が触れ合う。

――と、そのままジュリアスを抱きしめる。

「うん、暖かい」

ジュリアスは眉をひそめた。

「私を暖房器具とでも思っているのか。さっさと風呂に入ってくるといい」

「もう少し、このままで」

「私まで冷やすつもりか」

「そうしたら、一緒に温まれるでしょう?」

わざとらしく溜息をついてみせるジュリアス。

「…本当に勝手な男だな。離せ」

「嫌です」

結果――
再び風呂へ向かうことになったのは、言うまでもない。
しかも一人ではなく。


――オマケ(ピロートーク)

「二度も長風呂する羽目になったのは誰のせいだ」

「よく温まったと思えば。
もっとも後半温まりすぎたのは、あなたが原因ですが」

しれっと言ってのけるオスカーに、非難がましい視線を向けるジュリアス。

「そういえば、ナイトキャップと言っていたのではなかったか」

「ああ、そうでした」

ベッドを抜け出し、程なくリキュールのビンとショットグラスを手に戻る。

「身体を温める効能があるらしいですが…味見してみますね」

ショットグラスに注いだ薄緑色の液体をあおる。

「…なるほど」

神妙な表情を浮かべるオスカー。

「これは…あなたには少し向かないかもしれません」

「そうか?」

「ええ、というのは….」

不意に顔が近づき、唇が重ねられた。

…あまり好みでない、苦味。

「ああ…確かに」

オスカーのニヤリとした笑み。

「…ではお詫びに、責任持って暖めて差し上げますね」

「いや、もう十分に――」

「ご遠慮は無用です」

凍てつく寒さの夜。
オスカーの腕の中からは逃げられそうになかった。