キスすらしていないのに

大評議会の休憩時間。高い天井に声が反響し、議場は一時的なざわめきに包まれていた。議員や守護聖たちが席を立ち、書類を手に談笑したり、次の議題について低い声で意見を交わしたりしている。 ジュリアスは席を離れず、机上に広げた議…

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変えたのは

色とりどりの花が咲き乱れる聖殿の中庭。陽光が白い石畳を淡く照らし、花弁が揺れる。その中を、ジュリアスが女王候補と歩いている。 歩幅を合わせ、ゆっくりとした速度。ときおり女王候補の言葉に微笑を返し、柔らかな頷きすら見せる。…

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指切りの代わりにキス

その日のエスコートは、最初から最後まで完璧だった。 約束の時間ぴったりに寮の前へ現れたオリヴィエは、淡い色合いの小さなブーケを手にしていた。花の選び方ひとつとっても、主張しすぎず、しかし確かな美意識が感じられる。 「今日…

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無自覚は罪

午後の光が、バスルームの白いタイルに柔らかく溶け込んでいた。窓は少しだけ開けられ、庭から流れ込む風が、湿り気を含んだ空気をゆっくりとかき混ぜている。 「オスカー、ちょっと来てくれ」少し、不機嫌さを含んだ声。 扉の前に立つ…

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