出かける前のキスが長すぎる
朝の光は、まだ柔らかかった。 寝室には、薄いカーテン越しに淡い金色が満ち、空気は静かで穏やか。昨夜の名残を残したままのベッドで、二人は同じブランケットに包まれていた。 オスカーは先に目を覚ます。習慣のように身を起こしかけ…
続きを読む →朝の光は、まだ柔らかかった。 寝室には、薄いカーテン越しに淡い金色が満ち、空気は静かで穏やか。昨夜の名残を残したままのベッドで、二人は同じブランケットに包まれていた。 オスカーは先に目を覚ます。習慣のように身を起こしかけ…
続きを読む →大評議会の休憩時間。高い天井に声が反響し、議場は一時的なざわめきに包まれていた。議員や守護聖たちが席を立ち、書類を手に談笑したり、次の議題について低い声で意見を交わしたりしている。 ジュリアスは席を離れず、机上に広げた議…
続きを読む →食後の貴腐ワインと、はちみつの少しかけられたブルーチーズのせいか。その夜の空気は、いつもより少しだけ甘かった。 「今宵は、少しゲームをしませんか」 楽しそうなオスカーの手には、古ぼけた美しい箱。 「勝負だったらいつでも受…
続きを読む →週末は、特別な意味を持たない時間として、二人のあいだに置かれていた。 大きなソファに並んで腰を下ろし。ジュリアスはエスプレッソを口に運び、オスカーは静かに本をめくっている。互いに干渉せず、それでいて離れてもいない。そうい…
続きを読む →その夜、光の館のダイニングルームには、落ち着いた静けさが満ちていた。瀟酒な調度に囲まれたテーブルの上で、蝋燭の炎が揺れ、淡い光が三人の表情をやわらかく照らしている。 中央に座るのはこの館の主――光の守護聖ジュリアス。その…
続きを読む →執務の終了間際にまとめて持ち込まれた承認案件の束を、ジュリアスは不本意そうに私邸まで持ち帰った。本来なら机に残るはずのなかった書類。革張りのデスクに積まれた紙の角が、照明を受けて冷たく光っている。 夕食は簡単に済ませた。…
続きを読む →夕方の執務室。陽が傾き、書類の影が机に長く落ちている。 ジュリアスはペンを置き、少しだけ考えるような間を挟んでから言った。 「オスカー」 「はい」 「ひとつ、頼みがある」 その声音は穏やかで、どこか芝居がかっている。 「…
続きを読む →午後の郊外は、夏の匂いを含んだ空気に包まれていた。雲行きが怪しいと感じたのは遅く、次の瞬間には、逃げ場のない雨が落ちてくる。 「……ついていないな」 狭い軒下に身を寄せたジュリアスが、わずかに眉を寄せる。不機嫌というほど…
続きを読む →色とりどりの花が咲き乱れる聖殿の中庭。陽光が白い石畳を淡く照らし、花弁が揺れる。その中を、ジュリアスが女王候補と歩いている。 歩幅を合わせ、ゆっくりとした速度。ときおり女王候補の言葉に微笑を返し、柔らかな頷きすら見せる。…
続きを読む →女王の力によって常に快適に保たれているはずの聖地は、戴冠後間もない新女王の思いつきで、珍しく厳しい寒さに見舞われていた。 普段は長風呂の習慣のないジュリアスだが、ここ数日はゆっくり入浴している。こう寒さがつづくようでは、…
続きを読む →