ビリヤード: 第三戦「ローテーション – 技術と精神の総決算」

[デートでガチバトル]「プールバーでデートしたら華麗に叩きのめされました」Part 3

深夜のプールバー。
客席は半分以上が空き、カウンターではバーテンダーが静かにグラスを磨いている。
天井のスポットライトだけが緑のテーブルを照らし、周囲は闇に沈んでいる。

オスカーがキューを肩にかけ、ゆっくりとテーブルに近づく。
「最終戦はローテーションでいかがでしょう」

ジュリアスの眉がわずかに動く。
「私の得手と知ってか。 …面白い」

「全力でいきますよ」
その目は迷いがない。

ジュリアスはキューを取り、粉を軽く付ける。
「なら、受けてたとう」

ブレイク音が静寂を切り裂く。

序盤からオスカーは落ち着いて球を沈め、完璧なポジショニングを見せる。
ジュリアスも応じ、スピンと角度を操って球を次々と落とす。

二人の呼吸は一定、表情はほとんど変わらない。
ただ、キュー先の動きだけが研ぎ澄まされていく。

互いに10球以上を沈め、スコアはほぼ互角。
観客はもういない。

音は、球がぶつかる硬質な響きと、クッションを滑る低い音だけ。
まるで武道の試合のような緊張感がテーブルの上に張り詰める。

――難しい配置。
オスカーは深呼吸を一つして、3クッションからのコンボショットを選ぶ。
キューがしなり、白球が鋭く走る。

一度、二度、三度とクッションを蹴り、色球を誘うように当てる。
ポケットに沈む音が響き、ジュリアスの瞳がわずかに揺れた。

「…今のは見事だ」
静かな称賛が口をつく。

オスカーが一歩リード。
しかし、最後の決め球でわずかに力加減を誤り、ポケットの縁をかすめた。

ジュリアスは残された配置を見つめ、少しだけ笑った。

「勝負は紙一重だ。だが――」

ゆっくりと構えを取り、低く呟く。

「勝ち方にも、美しさがある」

白球が放たれ、クッションを四度蹴って、完璧な角度で最終球へと吸い寄せられる。
球が沈む瞬間、その動きはまるで舞のように滑らかだった。

オスカーは目を閉じ、深く息を吐く。

ジュリアスはキューを立て、静かに言った。

「これが、私のローテーションだ」