[デートでガチバトル]「スポーツバーでデートしたら華麗に叩きのめされました」Part 1
ネオンの明かりが壁に揺れ、賑やかなロックが店内に響く。
カウンターの奥で氷がグラスに落ちる音。
その手前――ダーツマシンの前に、二人が並んで立っていた。
「先日は勝ちを譲りましたが、今日はそうはさせません」
オスカーは挑戦的に笑う。
ダーツはオスカーの長年の趣味だ。
「ふ、お手並み拝見といこう」
ジュリアスは楽しそうに応える。
ゲーム開始。
オスカーが構える。
背筋は伸び、肩の位置は微動だにせず、右腕だけが滑らかに動く。
矢は迷いなく宙を走り、ブルの中心に吸い込まれる。
「トン…」と軽やかな音。電子盤が“BULL”の表示を弾き出す。
続けざまに二投、三投。
ブル、ブル、ブル。
501のスコアは瞬く間に縮まっていく。
ジュリアスは無言で見ていた。
最初のターン――矢はわずかに右へ逸れ、シングルの“1”に刺さる。
次も僅差で外れ、“5”に落ちた。
オスカーが口角を上げる。
「緊張されておられる?」
ジュリアスは答えない。
ただ、次の一投でブルに突き刺す。
それは力ではなく、まるで“置く”ような動き。
中盤、オスカーは安定したブル連発で着実に削る。
ジュリアスはまだ点差を詰めきれない。
しかし終盤――彼の矢が変わった。
構えた腕がしなやかに伸び、トリプル20に突き刺さる。
次も、また次も。
「トン…トン…トン…」
まるで機械仕掛けのような正確さで、赤い小さな三角形を射抜き続ける。
スコア差は一気に縮まった。
場の空気が変わる。
そしてフィニッシュ。
ジュリアスは残り“32”――ダブル16を狙う。
矢が放たれ――わずかに外れ、シングル16に刺さる。
静かな間。
オスカーは笑みを深くし、最後の一投でダブル8を正確に決める。
電子盤が勝利のアニメーションを光らせた。
「経験の差、でしょうか」
得意げな視線を送ってくるオスカー。
ジュリアスは矢を回しながら、淡々と答える。
「ふむ……面白い」