バックギャモン: 第二戦「炎を纏う手」

[デートでガチバトル]「ラウンジバーでデートしたら華麗に叩きのめされました」Part 2

ラウンジバーの空気が、わずかに熱を帯びていた。
夜はさらに深まり、窓の外には薄い霧が漂う。

オスカーの瞳が鋭く光り、グラスの中のバーボンが淡く揺れた。

「今度は、黙っていませんよ」
低く、しかし熱を孕んだ声。

サイコロが振られる――“5と4”。

黒駒が盤面を駆け抜ける。

オスカーの手は速く、力強い。

駒が盤を叩き、“カツン、カツン”と鋭い音を響かせる。
その動きは、まるで炎が駒に宿ったかのようだ。

ジュリアスは正面からそれを見つめる。
瞳は嵐の前の海のように静かで、微動だにしない。

オスカーは果敢に攻めていく。
ブロットをも構わず駒を前へ押し出し、“3ポイントブロック”を築いて白の進行を遮断する。

「沈黙は、もう通じません」

盤上に響く声は、挑戦そのものだった。

ジュリアスが振る――“2と1”。
慎重に駒を進めるが、黒の壁に阻まれる。

そして――

“カツン”と音を立て、白駒が跳ねてバーへ戻される。

オスカーは口元で笑った。

「どうです、この音」

まるで勝利の鐘を鳴らすように、駒を盤に打ちつける。
盤面は黒一色に染まり始める。

オスカーが振る――“6と6”。

歓声にも似た駒の連打。黒駒が一気に前線へと押し寄せ、ベアオフの体勢に入る。

ジュリアスの眉がわずかに動いた。
だがその表情は敗北ではなく、研ぎ澄まされた“観察”だった。

“スッ…カツン”

オスカーが白の音色を真似るように、駒を盤外へ送り出す。
残る駒はあとわずか。

「勝負は、音を立てて決めることもある」

炎を纏った誇りと共に、最後の駒が盤外に消える。

第二戦、オスカーの勝利。

ジュリアスは静かにグラスを傾け、淡々と告げる。

「激情もまた、戦術の一部だ」